私がゴルフを始めたのは42歳の時でした。
取引先の社長に「村田さん、ゴルフやらないの?」と誘われたのがきっかけです。正直に言えば、最初は「仕事のため」でした。接待ゴルフ、業界のコンペ、取引先との関係構築——そうした「手段としてのゴルフ」が、私のゴルフ人生のスタートでした。
あれから20年。今年で62歳になりますが、ゴルフは私の人生において、仕事以上に大切なものになりました。
40代:がむしゃらに振った日々
スコアだけが指標だった頃
ゴルフを始めた頃の私は、とにかく「スコア」に執着していました。
毎週のように練習場に通い、プロのレッスンを受け、最新のクラブに買い替え、スコアが1打でも縮まることだけを追い求めていました。ベストスコアが出れば喜び、叩けば落ち込む。まるでスコアカードに一喜一憂する日々でした。
当時の私のスイングは、若さに任せた「力任せ」のもの。フルスイングで飛距離を稼ぎ、多少曲がっても「若さでカバー」できていた時期です。ドライバーで260ヤード飛ばしていた頃が懐かしくもあり、今となっては少し恥ずかしくもあります。
ビジネスゴルフの功罪
40代のゴルフは、多くの場面で「ビジネスシーン」と不可分でした。
取引先との関係を深めるために、あるいは社内の人脈を広げるために、ゴルフは非常に有効な手段でした。実際、ゴルフを通じて今も続く深い友人関係を何人もの方と築くことができました。
しかし、「仕事のためのゴルフ」には、ある種の窮屈さもありました。接待ゴルフでは相手のペースに合わせなければなりませんし、成績が悪いと「仕事もこんな感じなのか」と思われるのではないかと気を揉んだこともあります。
純粋にゴルフを楽しめるようになったのは、実は50代に入ってからのことです。
50代:身体の変化と向き合う
飛距離の衰えを認めること
50歳を過ぎた頃から、明らかに飛距離が落ち始めました。
ドライバーの飛距離は260ヤードから230ヤードに。そしてそれは年々、じわじわと短くなっていきました。最初は認めたくありませんでした。「まだまだ飛ばせる」と意地になって力一杯振った結果、腰を痛めて2ヶ月ゴルフができなくなったこともあります。
あの腰痛は、今思えば体からの「メッセージ」でした。「もう、若い頃のゴルフは卒業しなさい」と。
「自分のゴルフ」を見つける旅
飛距離という「武器」を失ったとき、多くのゴルファーは自信を失います。私もそうでした。
しかし、皮肉なことに、飛距離の衰えは私のゴルフを より深く、より豊かなもの に変えてくれました。飛ばなくなったからこそ、コースマネジメントを真剣に考えるようになりました。アプローチやパッティングの精度を上げることで、飛距離の落ちをカバーしようと努力するようになりました。
そして何より、 「スコアだけがゴルフの目的ではない」 ということに、ようやく気づいたのです。
コースの美しさに目が向くようになった
飛距離を追わなくなると、不思議なことに、今まで見えていなかった景色が見えるようになりました。
朝霧に包まれたフェアウェイの美しさ。紅葉に染まった山々を背景にしたティーショットの贅沢さ。冬枯れのコースを吹き抜ける冷たい風の心地よさ。
40代の頃は、ボールの行方ばかり追いかけていて、こうした景色を楽しむ余裕がまったくありませんでした。50代になって初めて、ゴルフコースが「どれほど美しい場所」であるかを実感したのです。
佐久間プロとの出会い
「力に頼らないゴルフ」との邂逅
55歳の時、知人の紹介で佐久間プロと出会いました。
最初のレッスンで佐久間プロが言った言葉を、今でも鮮明に覚えています。
「村田さん、もっと力を抜いてください。ゴルフクラブは、あなたが思っている以上に優秀な道具です。あなたがすべきことは、クラブの邪魔をしないことだけです。」
正直、最初は半信半疑でした。力を抜いたら飛ばないのではないか。そう思っていました。しかし、佐久間プロの指導に従って力を抜いたスイングをした時、ボールは以前よりも まっすぐに、しかもほぼ同じ距離 飛んだのです。
Sメソッドの本質
その後、佐久間プロのSメソッドを体系的に学ぶ中で、私は一つの確信を得ました。
Sメソッドは単なるスイング理論ではない。 「身体の変化を受け入れながら、ゴルフを楽しみ続けるための哲学」 である、と。
若い頃のように飛ばなくても、若い頃とは違う方法で、同じように——いえ、それ以上にゴルフを楽しむことができる。Sメソッドは、その道筋を明確に示してくれました。
実感した変化
Sメソッドを学び始めて半年が経った頃、いくつかの変化を実感しました。
まず、 ラウンド後の疲労感が劇的に減りました 。以前は18ホール終わると疲労困憊で、帰りの車の中で居眠りをすることもありました。しかし、力みを取ったスイングでは、身体への負担が格段に小さくなります。ラウンド後も「まだ9ホール行ける」と思えるほどの余裕がありました。
次に、 スコアの波が小さくなりました 。力任せのゴルフでは、良い日は80台前半、悪い日は100を叩くという激しい波がありました。Sメソッドを取り入れてからは、ほとんどのラウンドが85〜92の範囲に収まるようになりました。大叩きが減ったのです。
そして最も大きな変化は、 ゴルフが「楽しい」と心から思えるようになったこと です。スコアのプレッシャーから解放され、一打一打を味わいながらプレーできるようになりました。
60代:ゴルフは生涯スポーツ
スコアよりも大切なもの
60歳を超えた今、私にとってゴルフとは何かと問われれば、こう答えます。
「共に時間を過ごす仲間と出会えた、人生最大の贈り物」
もちろんスコアは大事です。良いスコアが出れば嬉しいし、向上心を持って練習を続けることも、人生を豊かにしてくれます。
しかし、それ以上に大切なのは、月に2〜3回、気の合う仲間と一緒にコースに出て、あれこれ言い合いながらプレーし、ラウンド後にクラブハウスのレストランで「今日の○番ホールは最高だったね」と語り合うこと。この時間こそが、ゴルフの真髄だと思うのです。
健康との関係
60歳を過ぎると、健康に対する意識は否応なく高まります。
ゴルフは、シニアにとって理想的な運動です。18ホールを歩くと約8〜10キロメートルの距離になります。アップダウンのあるコースならば、それ自体が良質な有酸素運動です。
しかも、「ただ歩く」のとは違い、ゴルフには「考える」「判断する」「集中する」という知的要素が加わります。これは、認知機能の維持にも効果があるとされています。
私自身、60歳の健康診断で「あなたの身体年齢は50代前半です」と言われた時、ゴルフを続けてきて本当に良かったと思いました。
新しい仲間との出会い
フェアウェイ倶楽部に参加してから、ゴルフを通じた新しい出会いが広がりました。
異業種の方々、リタイアされた元経営者の方々、ゴルフ歴50年のベテランの方々。年齢も経歴もバラバラですが、ゴルフという共通の趣味を通じて、驚くほど深い交流が生まれます。
特に印象的なのは、70代のKさんとの出会いです。Kさんは私より10歳年上ですが、Sメソッドを学んでから飛距離が10ヤード伸びたとニコニコしながら話してくれました。
「佐久間プロに出会えなかったら、もうゴルフをやめていたかもしれない」 ——Kさんのこの言葉は、私自身の気持ちを代弁してくれているようでもありました。
これからゴルフを始める同世代の方へ
「60歳を過ぎてからゴルフを始めるのは遅い」と思っている方がいらっしゃるかもしれません。
しかし、声を大にして言いたい。 ゴルフに「遅すぎる」はありません。
ゴルフは、自分のペースで楽しめるスポーツです。テニスやサッカーのように相手の動きに合わせる必要がなく、自分のボールに向き合い、自分のリズムでプレーできます。
体力に自信がない方は、最初はハーフ(9ホール)から始めれば良いのです。体が慣れてきたら、18ホールに挑戦すれば良い。ゴルフには「自分なりの楽しみ方」が無限にあります。
まとめ:ゴルフは人生の縮図
ゴルフは、よく「人生の縮図」だと言われます。
良いショットもあれば、信じられないようなミスショットもある。計画通りにいくホールもあれば、予想外のトラブルに見舞われるホールもある。しかし、一つ一つの結果に一喜一憂するのではなく、18ホール全体——つまり「一日の旅」として俯瞰してみると、そこには必ず何かしらの「学び」や「発見」があります。
人生もまったく同じではないでしょうか。
仕事で成功した日もあれば、大失敗した日もある。しかし、人生全体を振り返ったとき、その一つ一つが今の自分を形作っていることに気づきます。
ゴルフがこれほど多くの人を魅了し続けるのは、この 「人生との共鳴」 があるからだと、私は思っています。
60歳を超えた今、私はゴルフと出会えたことに心から感謝しています。そして、佐久間プロ、フェアウェイ倶楽部の仲間たち、そしてゴルフを通じて出会ったすべての方々に、この場を借りてお礼を申し上げたいと思います。
さあ、次のラウンドへ——。
天気予報では、来週の土曜日は晴れだそうです。